いよいよ9月も間近―秋の到来です。
この時期になると皆様も着物についてお話になる時に「単衣の季節ですね…」とか「そろそろ夏物の片付を…」といった会話が出てくるかと思います。
「着物って難しい…、堅苦しい…」と言われる理由の一つにこの「袷(あわせ)」、「単衣(ひとえ)」、「盛夏(せいか)」といった季節に合わせた装いの変化、がよく上げられます。
ですが、すこし慣れれば実は非常に簡単なことですし、ある程度理解してしまえば逆に着物の楽しさ、お洒落を今まで以上に楽しめるのです。
今回の着物豆知識では、この<季節の装い>について順に見ていきましょう!
 
 
 
 
  まずは下の図を御覧下さい。
 
1月 2月 3月 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月 12月






 
  袷の時期は「寒い時期、涼しい時期」→春、秋、冬、
盛夏の時期は文字通り「暑い時期」、→夏
そして単衣の時期は「季節の変わり目、つまり暑くなっていく時期(春単衣)と涼しくなっていく時期(秋単衣)」→初夏、初秋
と言うことがおわかり頂けたかと思います。
 
 
 
 
  「寒い時期は温かく、暑い時期は涼しく装うため」という、非常にシンプルな機能的理由が一番です。それにプラス、「季節感を出すことによってお洒落を楽しむ」というのも大きな理由です。
日本ほどはっきりとした「四季」がある国は実は珍しいのではないでしょうか?
春の華やかな花、夏の生命力あふれる緑、秋の趣きある紅葉、冬の情緒あふれる雪かむり、といったように草花だけでも四季によって様々に景色を変えていきます。そしてまた古来より日本人は豊かな自然の移り変りを敏感に感じ取り、楽しんできました。
「山々が季節ごとに表情を変える」と言う文章を、現代に生きる私達が素直に読める、情感を感じ取れると言う事は、今でも日本人が古来の美意識を受け継いでいる証明かもしれません。
文明が発達し、あらゆる物がいつでも手に入る現代こそ、「季節感」という感覚を大事にしていくことが本当の「お洒落」、「格好よさ」かもしれませんね!

それでは次に実際にどこがどう違うのかを見ていきます。

 
 
 
 
  簡単に言うと、生地・仕立て方が違います。また着物のお洒落に慣れてくると色・柄にもこだわりたくなっていくものですよ!
 
 
 
 

 

透けない生地を裏地をつけて・仕立てた着物、およびそれを着る時期。

袷仕立てと紬(左)と御召(右)。裾の八掛で雰囲気がだいぶ変わります。
おそらく皆様がお持ちの着物のなかでも一番お持ちの着物ではないかと思います。
着る時期も長く、一番最初にお求めになる着物ではないでしょうか。しかし、だんだんと着物を着慣れていくにつけて春は桜、秋はもみじ、またお正月の時期は梅といった柄の着物や帯を選んでいくとお洒落感もぐっと増します。
また、裏地である八掛(はっかけ、袖口や裾回しにつけます)選びもこの時期ならではの楽しみです。春に着たいと思う着物にはさわやかな色目を、秋に着たいと思う着物にはこっくりとした色を、寒い時期の場合は温かさを感じさせる暖色系の色を選ぶのも楽しいですね。

  あまり見えないようで、歩いたり、座ったりした時にチラチラと・・・。

もちろん今あげた色、柄、八掛選びはあくまでも参考ですので、皆様の個性をだしたお洒落、色合せを楽しんで頂いてもかまいません。
また、同じ着物と帯でも、帯〆や帯揚といった小物を変えるだけでも全体のイメージは大分かわります。
皆様それぞれの個性あふれるお洒落を一番楽しめる時期です。


袷の代表的な着物
・カジュアル:結城紬などの紬、紬地の小紋
・フォーマル:綸子地や縮緬地に染めた友禅物、または色無地

 
 
 
 

透けない生地を裏地を付けないで・仕立てた着物、およびそれを着る時期。

  単衣仕立ての紬の裾。裏地が無いのがわかりますか?

6月と9月、つまり季節の移り目に着ます。
この時期に着る着物は裏地をつけません。ですので袷の時期から単衣の時期に変わり最初に単衣の着物を着ると非常に軽く感じます。
基本的に、特にカジュアル用は、「単衣にしか着てはいけない着物」というのは実はほとんどありません。上記の「袷の代表的な着物」も裏地を付けずに仕立てればそれは「単衣の着物」になりますし、逆に下記の「単衣の代表的な着物」に裏地を付けて仕立てればそれは「袷の着物」になり、それぞれの時期に着る着物となります。またフォーマル用に関しても、季節感があまりない柄(宝尽くしや、抽象的な柄)は袷・単衣どちらでも大丈夫です。


秋単衣用の附下。撫子(なでしこ)、女郎花(おみないし)、桔梗(ききょう)  、萩(はぎ)など季節の花が美しく描かれています。

しかし、せっかくならそれぞれの
時期のお洒落、着心地を楽しみたい物ですよね。
下記の「単衣の代表的な着物」はどれも、袷の着物に比べやや張りが強くシャリ感があります。これは裏地が付いてなく、直接肌に触ることが多いため少々汗ばんでも肌離れが良く快適に装うため、という理由からです。

またフォーマル物に関しても、春単衣なら「あやめ」、秋単衣なら「すすきや秋草」などその季節にぴったりの柄を、友禅や刺繍で表した物は単衣用となります。
単衣の時期は一見すると短いようですが、結婚式やパーティーが多い時期で、着物を着る機会が多く、また気候的にも快適にお洒落を楽しめる時期でもあります。
季節感、という着物のお洒落の醍醐味を、実は一番楽しめる時期かもしれませんね!

単衣の代表的な着物
カジュアル:本塩沢・結城縮・紬地の小紋
・フォーマル:揚流地に染めた友禅物、または色無地・無双訪問着

 
 
 
 

透ける生地を裏地を付けないで・仕立てた着物、およびそれを着る時期。

新潟県産の麻織物、小千谷縮。涼感を誘う爽やかな色合い。

この時期は着物好きな方々には実は一番楽しい時期かもしれません。
絹製の生地でも絽、紗といった盛夏用の物になり、また、麻、木綿、また古代布といわれる品布や葛布というように、着物、帯の生地も様々な物があります。
全ての生地に言えることですが透ける感じが強く、「涼感」を感じさせてくれる物であり、また実際に着て頂いても非常に涼しいです。
麻や木綿のようなカジュアル着物は慣れてしまえば家でもお手入れができますので、お祭の時に浴衣代わりにきて頂いても楽しいです。
またフォーマル物も「流水」や「蛍」など、涼を感じさせる柄が多く、着ている方はもちろん、周りの方まで見ているだけで爽やかさを運んでくれます。夏の着物はよく「着物を着ると暑いから…」といって、

左は夏小紋、右は夏附下。
ついつい遠慮してしまう物ですが、機会があれば是非、「着物だから暑いのではなく、暑いから暑いんだ!(笑)」ぐらいの気持ちで着てみて下さい。実は非常に涼しく快適にお洒落を楽しめることがお分かりいただけると思います!




夏附下のアップ。地紋(じもん・生地の織模様)がある紋絽といわれる生地です。 
盛夏の代表的な着物
・カジュアル:夏大島、夏結城、宮古上布、小千谷縮、芭蕉布
・フォーマル:絽や紗の生地に染めた友禅物、または色無地
 
 
 
 
  単衣や盛夏の時期に特によく聞かれるご質問です。
お求め頂くのが一番良いのですが(笑)、決してお安い買い物ではございませんし、又、急な場合もございます。
その場合は例えば、帯だけでも、又は、帯〆や帯揚、襦袢の半衿といった小物だけでもその時期に合った物に替えるだけでも雰囲気はだいぶ変わります。

基本的にフォーマル物はある程度、上記<いつ変わるの>の図に合わせて装いを変えたほうがよいかと思います。フォーマルの席はその人だけでなく、ご家族や会社などを代表しての参加、という場合も多く季節の装いをして行くことで列席者にもそしてお招きいただいた方にも礼を尽くす事なるかと思います。

逆にカジュアル物はある程度自由に考えても良いかと思います。(真冬に上布、とか、夏真っ盛りに袷の紬などあまりにも突拍子の無い物は別としてですが…)
少々暑くなってきたら5月半ばから単衣の着物を着る、といった事もよろしいかと思います。
着物のお洒落に「季節の先取り」があります。これから訪れるであろう季節を待ちわびる気持ちを装いに込める事は古来からお洒落とされてきました。(逆にいつまでも、過ぎ去った季節の物を着るのは良くありません。秋にアロハシャツを着ている感じでしょうか…)
この基本を押さえて自由にお洒落を楽しみましょう!

 
 
 
 
  「やっぱり着物って面倒だなー」と思われましたか?
これまで書いてきたことは「法律」でも「憲法」でもございません。ですので守らなかったからといって誰かにつかまったりはしません(当たり前ですが…)。
しかし長く着物を着てきた日本人が「これが気持ちよく着られるし、お洒落よね!」といって受け継がれてきた「着物の楽しさ」でもあるのです。
大切なことはTPOを守って「着物のお洒落」を楽しむことです。
「季節の装い」の基本を判った上で、堅苦しく考えず、着物をお召しいただけたら幸いに存じます。
 
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